不動産売買の契約解除にはどのような種類があるの?種類や流れを解説
不動産売買は、変更が無いように慎重に進めるかと思いますが、やむを得ない事情により、契約解除を考えられるケースもあります。
その場合、売買契約のあとでも契約解除はできるのか、契約解除はどのような手順で進めれば良いのかなど、気になる疑問点も多く感じられるでしょう。
本記事では、不動産売買の契約解除は可能なのかや、契約解除の種類、流れについて解説します。
契約解除はできる!不動産売買の解除期限や違約金の目安
売買の当事者がそれぞれの意思に基づき、不動産売買契約を交わしたあとに、何らかの事情が生じた場合、契約解除はできるのでしょうか。
まずは、不動産売買における契約解除の概要や契約解除ができる期限などを解説します。
契約後の契約解除は可能
結論からいうと、不動産売買契約を取り交わした後でも、契約解除は可能です。
売買契約とは本来、売却する売主の意思と、購入する買主の意思の合意がとれて成立をするものであり、これは不動産売買においても同様です。
一方、契約解除は、売買契約を締結後に、契約の当事者である売主または買主が意思表示をおこない、契約を取り消すことを指します。
一度契約が成立した場合でも、やむを得ない事情が発生した場合に契約解除はできますが、基本的には無条件できるものではありません。
つまり、解除原因となる一定の理由が認められることにより、解除できるのです。
そして、契約解除にあたって、違約金の発生や手付金の放棄といった対応が必要になる可能性があることも気を付けたいポイントです。
不動産売買で契約解除がおこなわれると、当事者それぞれに原状回復義務が生じます。
たとえば、住宅が傾いていたことから契約解除に至った場合、買主は建物を返し、売主は代金を返すことが義務です。
遡及効により、契約期間の解消が契約を結んだときにさかのぼって、契約解除の効果の生じます。
解除できる期限がある
不動産売買の契約解除が、手付金の放棄や倍返しによる方法でできる期限は、契約の履行の着手となるまでの期限です。
期限を超えてから取り消しをおこなうには、手付金の違約金を支払う可能性が出ます。
不動産売買では、特約として、契約解除の期限となる期日を設けることが多いです。
契約から決済に至るのが3か月以内なら、契約から1か月ほどが契約解除の期日の目安となります。
違約金の目安
一般的には、契約解除のために必要な費用と違約金は、手付金が価格の1割前後で、違約金が価格の2割前後です。
違約金の支払いが必要なケースでは、手付金のほかに、価格の2割前後を支払います。
売主と買主の話し合いをおこない、双方が同意したときには、契約解除が違約金なしでできるケースもあります。
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違約金不要のケースも!不動産売買の契約解除の種類
何らかの事情から契約解除をおこなう場合に注意したい違約金ですが、契約解除の種類のなかには、違約金や手付金を支払うことなく解除できる場合もあります。
ここでは、買主側と売主側に分けて、不動産売買の契約解除の種類をご紹介します。
買主側が契約解除できる場合
買主側からの意思で、不動産売買の契約解除が可能なケースは、次の6種類です。
①手付金の放棄
不動産売買契約を結んでから買主がおこなうキャンセルの種類として、もっとも多いケースが手付金の放棄です。
手付損ともいわれる方法で、買主がすでに払っている手付金を放棄することにより、有効となります。
この種類の解除は、履行に着手される前の状態でおこなう必要があります。
なお、期日は契約内容によって違うため、確認しておきましょう。
②売主の債務不履行
不動産売買契約の相手方が、義務を果たさなかった場合に、残る一方がおこなう契約解除の種類です。
期日までに引き渡しがされず、売主に促しても履行されないときに、おこないます。
ほかにも、物件が引き渡しより前に火災が生じて全焼した場合などは、履行不能として債務不履行に含まれます。
③違約金が生じないローン特約での解除
買主が住宅ローンに審査を通過できなかった場合、契約書に特約を記載していれば、特約によってキャンセルができ、違約金もかかりません。
④契約不適合責任
引き渡しを受けた物件の品質や種類などが、契約内容と適合しないケースは、買主側から解除ができます。
契約内容とは建物構造が異なるものを引きわたされた場合などに、契約不適合責任を追及できますが、民法の定めにより、追及が可能な期間は売買契約から1年以内です。
⑤クーリングオフ
不動産会社から書類を発行された日から8日以内であれば、買主側から、違約金を支払うことなく不動産売買契約のキャンセルができる可能性がります。
ほかにも条件として、買主は宅建業者ではなく、売主が宅建業者であることや、契約を締結した場所が不動産会社以外の場所であることなどが求められます。
⑥消費者契約法による解除
売主が間違った情報や事実と相違のある情報を伝えていたときに、消費者契約法に基づき、違約金を支払わずに契約を取り消すことが可能です。
買主側が契約解除できる場合
売主側からの意思で、不動産売買の契約解除が可能なケースは、次の5種類です。
①手付金倍返し
売買契約締結後に、売主から契約解除する場合は、手付金の放棄ではなく、倍返しで買主に支払うことにより契約の効力を解消できます。
②買主の債務不履行
売主から解除をできるケースとして、買主が期限内に代金を支払わなかったなど、債務不履行での解除が可能です。
③転居前の損傷や滅失
買主が転居するまえに、火災や災害で物件が損傷や滅失したときには、不動産売買の契約が白紙となります。
この場合、手付金は返すことが必要ですが、損傷の程度が軽微であれば、修繕を売主が負担して契約したままにすることも可能です。
④反社会的勢力廃除条項
相手方が反社会的勢力に該当する場合、強制的に契約解除となりますが、買主からみた売主が該当するケースでも同様です。
違約金のほか、代金の8割を目安に制裁金の支払いも求められます。
⑤契約不適合責任
これは、売主側からではなく、買主から契約不適合責任による解除の求めがあった場合に、売主にとって契約解除に至る可能性が注意点です。
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不動産売買の契約解除!ケース別の流れ
買主であっても、売主であっても、不動産売買契約解除の流れは慎重に取り組むことが大切です。
ここでは、契約解除の流れを不動産売買契約後と、媒介契約後のケースに分けて解説します。
不動産売買契約の解除
不動産売買契約解除については、まず不動産会社に連絡することが最初の流れです。
直接、相手方に連絡を入れることは、トラブル防止のためにも避けましょう。
不動産会社に契約解除の意思を伝え、対応を依頼します。
お伝えいただいた次の流れでは、不動産会社より、相手方に対して、配達証明付き内容証明郵便を用いて契約解除が書面で通告されます。
その後、違約金などの交渉に合意がとれれば解除ができるため、期限までに必要に応じて、手付金の返還や違約金の支払いをすれば完了です。
媒介契約の解除
不動産売買に取り組む際は、媒介契約も結ぶことになります。
とくに売主の方の場合は、仲介を依頼する段階で媒介系契約を結ぶことにより、本格的に販売活動を開始することが可能です。
媒介契約を結んだ段階での契約の解除は、売買契約を結んだ後とは流れが異なります。
専任系の媒介契約のケースでは、書面を用いて解除を伝える流れです。
媒介契約解除の通知書といった題名のほか、作成日や解除理由などの必要事項を書いて、内容証明郵便を用いて送りましょう。
一般媒介契約であれば、電話により、契約解除することを申し出るだけで流れは完了となります。
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まとめ
不動産売買契約を結んだ後でも、契約解除をすることは可能です。
買主のローン特約での解除の場合など、違約金が生じないケースもありますが、手付金の放棄や倍返しで手続きすることも多いため、契約解除は慎重に検討しましょう。
また、トラブルを避けるためにも、売買契約の解除を実際におこなう際には、不動産会社を通じてご依頼いただき、取り組むことがポイントです。